工場で修行した話

    8/10㈯ 天気:曇りのち晴れ

 

    今日は、気乗りしないけど金稼ぎのために工場へ単発バイトをしに行った。場所は東苗穂にある大徳工場。コンビニやスーパーで売っている麺類を中心に作っているところだ。時給は1000円と悪くない、と思って応募した。その時の話である。

    まず、行き方が分からないため近隣のバス停を調べる。大徳工場付近に行けるバスは全部で3つ。そのうち集合時間に間に合うのは2つ。そのうちひとつが12:50から大通バスセンターからでるバスだった。集合時間は13:30。最寄りである東苗穂4条3丁目までは20分。確実。僕は12:44に地下鉄大通駅に着いた。さて、事前調査をしていないがバス停はどこだ。東にあるのは知ってる。東に行こう。東に行った。バス停あった。でかいバス停。ここか。入る。乗るべきバスは東6。どこだ...

 

ない

 

どこにもない。なぜ。もう1回調べてみる。待て。バス停の場所違うじゃねーか。そして時計を見れば12:50。せめてもの場所を確認する。もう少し南に行ったところか。行ってみるとバスは目の前を過ぎていった。遅刻確定か。

    バス停で得た時刻表一覧を見ると、環状通東駅から出ている。出発時間は13:10。走って地下鉄に乗れば間に合うか。行くか。急いで行くと栄町行きの地下鉄は13:02出発。到着は13:09。着いたら走れば行けそう。乗った。着けば13:09。走れ。僕は走った。外へ出た。バスが目の前にいる。これか。いや違う。東78じゃない。東68だ。待てよバスターミナルってどこだ。2番出口前の看板にはバスターミナルと書いてある。どこだよ。目の前に見えたのは乗るべきバス。おいおい、後ろから出てきたぞ馬鹿野郎。

    結局僕は、最寄りでは無いものの13:15出発の、東苗穂8条3丁目に止まるバスに乗った。しかし、大徳食品のある場所は東苗穂5条3丁目。徒歩で19分。遅刻確定ですお疲れ様です。それでも僕は少しでも遅刻したくないから、バスを降りてから全力で走った。降りた時間は13:36。完全遅刻。走る。脇腹が痛くなってきた。もう少しだ。

    着いた時には他のバイト達への説明は終わりかけだった。急いで着替える。結局説明は終わってしまい、一人会議室で待つことに。10分後に社員さんが来た。一人で説明を受ける。食品を扱う工場なため、体全身を消毒する。そして、何事もなかったかのようにベルトコンベアのラインの仕事に参入した。

    実際にやった仕事は、ベルトコンベアのライン。コンビニやスーパーで見かけるような麺製品を作るというもの。指定したものを容器の上に乗せていくという単純なお仕事。まず僕がやったのは、先頭の人が麺を入れた容器の麺がはみ出ていないか、はみ出ていたらそれを正すというもの。その前にだ。なぜ。なぜ俺のベルトコンベアだけ速いんだ。臨時で設置したものとはいえ速さが違うのはおかしくないか。on,offスイッチしか見えなかったから文句は言えなかったが、なんだかなぁ。

    次の商品はよく売っている麺の上にトッピングが入っているケースが重なったやつの上のケースをはめる役割だ。意外とこの仕事はあまりコンベアに置いていかれそうなことは無かった。しかし、容器が丸いこと、コンベアで丸い容器が右から左へ流れていく...

 

太鼓の達人!?

 

ふとそう思ってしまった(後からそう思ったとかではなく、作業中に思っただけ)。しかも流れてくる容器のスピードに合わせてケースを乗せるリズムゲームと来たもんだ。色がないだけでまんま太鼓の達人ではないか。それからの作業、それにしか見えなくなった。これが1番印象に残ってる。

    その他、作業中に頭の中で宇宙の音楽流してみたり、作業する内容を口に出しながらやってみたり、ケースの掴み方のコツを押さえて上気分になったり、コンベアの高さが低くて腰や首がガチガチになったり、気づけば仕事時間も終わりが見えてきた頃。退社間際の社員がやっている、来た商品をワゴンに入れる作業を代われと言われ、仕事を教えてもらう。ワゴンへの積み方を教えてもらい、やってみる。入れる商品がなかなか来なかった時に社員さんが色々話してきてくれた。要約すると「俺はもう39だけど、20代のうちに遊んでおいた方がいいよ」ってことで、単純作業と背中の痛さによる疲労が一瞬和らいだ。最後のラインの仕事はワゴンに積むということもあり腰をアクティブに使えるため、固まった体を使える作業に少し喜びを覚えた。

    そうこうしているうちに時間が来た。床やコンベアの清掃をし、全作業を終えた。無事5000円を獲得して、外へ出た。獄中から開放された元犯罪者の気持ちがわかった。開放感が半端なかった。安堵に浸りすぎて2回ほど帰りのバス停帰の位置を間違えた。帰り際に割引券を使ってマックのポテトを購入した。昼飯を買う暇がなくて食べていなかったから、死ぬほどうまかった。

 

    さて、書いているうちに日をまたいでしまったが、感じたことを最後に書こう。まず、身長の高いやつは絶対この仕事をやるな。コンベアの高さは誰でも届くように少し低めに設定されている。腰、首、肩が限界突破する。やめとけ。

    そして、今まで文句だったり感情ばっかりだったので、真面目なことを書く。コンビニやスーパで売っている麺類は自動化が難しそうな類いだと感じた。自分で作業してもわかったのだが麺は漏れてるし、ケースを一髪ではめるのは意外と至難の業だったりする。少しでもズレるとハマらなくて困る。そして工場の規模的にもこれ以上の機械を入れるようなキャパがなさそうだ。それに加え、機械を購入すると仮定しても、購入費、維持費、電気代を考えたら、まだまだ人件費の方が安いはずだ。それだものバイトをとるわけだ。スーパーやコンビニの麺に感謝を覚えて、またこういう作業を週数回単位でやっている社員に敬意を払って、さらに最後に話しかけてくれた社員さんに絶大な感謝をして修行は終わった。

 

    もちろん、こんな仕事は二度とやらない。ただ、それを体で感じたのは人生単位でも数少ない経験かもしれない。5000円貰えたことも含めて、悪くはなかったかもしれないなと思ったのであった。

 

    もう行かないけど。