基礎練習の方法概論③(タンギング、ダイナミクス、音楽と練習)

    いよいよ第3回である。第1回ではストレッチとロングトーン、第2回はインターバルとリップスラーについて書いた。(過去記事も載せておくのでぜひ見てください↓)

 

sirasunohi.hatenablog.com

 

 

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第3回はタンギングダイナミクス、音楽と練習をつなぐ思考についてだ。これらを説明し、第1回、第2回と合わせれば基礎練習のやり方などを大方全て説明したことになる。全てのセットアップでより良い基礎練習ができることを祈っている。

 

 

1. タンギング練習

 

    この練習の目的は多くの人が理解しているだろう。あえて言語化するなら、音の頭をはっきりさせることで音の響きを最初からつけること、音と音の分かれ目をはっきりさせハキハキとした印象を曲に、聴衆に与えることだ。練習方法も比較的単純だろう。好きなテンポを設定してそれに合わせて音を刻んでいくだけだ。

    ただ、タンギング練習は目的を具体化することでもっと実用的な練習になる。多くの人は単音で同じリズムで刻む練習をしている。しかし、実際の曲では音階で刻ませたり三連符や16分で刻ませたりなど単音で一定のリズムで刻ませることはあまりない。より実践に近づくための練習方法をいくつか提唱する。

    1.1. 音階の次の音と交互に

    例えばB♭durを考える。B♭とその次の音Cで交互にタンギングをする練習だ。これをCとD、DとE♭などと続けて行う。(以下写真)

 

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交互にタンギングする練習の例

    やってみるとわかるが、単音でやるよりも明らかに難しい。舌の動きと同時に口の動きや細かい息の圧などの調整も必要なためかなり難しくなるが、同時にかなり実践に近づくと思われる。

    1.2. チェンジアップ練習にする。

    チェンジアップという言葉を野球で聞いたことがある人もいるかもしれない。野球では、ストレートなど同じ球種の中で突然速さを変えることを指す。タンギング練習では、チェンジアップとはタンギングするリズムを変えることを指す。具体的には、最初に二分で刻み、四分、2拍3連、八分、三連符、16分と間隔を狭くしていったあと逆に三連符、八分、2拍3連、四分、二分としていく。

    やってみるとわかるが、こちらも意外と難しい。写真も添付しておくので、自分の苦手な音など好みの音でぜひやってみて欲しい。

 

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チェンジアップの練習例

 

2. ダイナミクス練習で音の広がりを!

 

    個人的には基礎練の中でも少し影が薄い存在でありながら、音楽を奏でる上で重要だと思っているのがこのダイナミクス練習。主な目的は2つ。

  1. 表現の幅を広げる
  2. 音量変化や音楽を自然にする

    である。ひとつひとつ見ていこう。

    2.1 表現の幅を広げる

    強弱を大きくつけられるようになれば、音楽表現の幅が単純に広がる。特に曲になると楽譜を追うのに必死で忘れてしまいがちな要素なので、基礎練の段階でダイナミクスをつける練習をしておくことをおすすめする。

    2.2 音量変化や音楽を自然にする

    表現の幅を広げるのはいいが、ダイナミクスの変化は練習していないと他の要素も変化させてしまいがちだ。例えば音色や音程がいい例だろう。その要素も変化させてしまうとかえって音楽表現として不自然になってしまう。ダイナミクスは変えるが音色や音程など他の要素を極力変化させない。これは練習しないとできないことである。

 

    では、練習方法にはいるが、これは特別専用の楽譜を用意しなくても、例えばロングトーンに音量変化をつけるだけでも十分な効果が期待できる。ただ、最初のうちは音域的に下の音でやることをおすすめする。下の音にダイナミクスをつける時に口の容積や息の当てる点などが大きく変化するため慣れやすいからだ。

 

3. 表裏一体する音楽と練習

 

    今まで基礎練習について色々述べてきたが、基礎練習を行う理由は当然曲を完成させるための必要最低限の要素を確立させるためだろう。ロングトーンが出来ないとコラールは綺麗にならないしリップスラーが出来ないと跳躍のあるメロディーは上手く吹けないしダイナミクスをつけられないと音楽が単調になって聴衆が暇になってしまう。

    特に最近、僕は音楽と練習を上手いこと結びつけることを考えている。そうすれば常に音楽を感じた練習になり、練習がより効率的になって無駄な時間が減る。そのために最近必ずやっていることは、どんな練習でも何かしらのイメージを持つことである。ただのB♭のロングトーンでも綺麗な海の前で沈んでいる夕焼けを想像するのと、神々しい大聖堂の中で1人祈りを続ける少女を想像するのと何も想像しないのとでは音楽表現に雲泥の差がある。

    どんなことを想像しても良いが、聞いている人達に「この音楽はこんなイメージがありますよー」というニュアンスを伝えるためには自身も感じないといけない。その練習を普段の練習とともに考えておくだけで表現の幅は広がるし、何より頭を使うので積極的な音楽表現になる。そうやって普段から音楽のことを考えていれば特に意識しなくても音楽表現がつくというわけだ。

    音楽表現を普段の練習に入れること。それはどんな音楽をやる上でも重要であるということが分かれば幸いである。

 

まとめ

 

    今回はタンギングダイナミクス、そして音楽表現の基礎を説明した。どの練習も同じくらい重要であるが、ダイナミクス練習は強弱表現の広がり以上に色々な効果が得られる効率の良い練習なのでぜひともやってみて欲しい。これらと第1回、第2回でやった基礎練習を併用して金管楽器の基礎を徹底してみて欲しい。全3回の練習を合わせても30~40分くらいなので、基礎練習としては十分だろう。

 

    次回は、あるかわからないが、ある時はよろしく🙏