ブリュッセル・レクイエムの魅力

    2018年、第66回全日本吹奏楽コンクール全国大会にて、激震を走らせる演奏があった。(筆者は行っていないが...)

    ベルト・アッペルモントが2017年に作曲した「A Brussels Requiem(ブリュッセル・レクイエム)」だ。

    2016年3月22日にベルギーはブリュッセルで起きた爆撃テロの追悼として描かれた作品で、当時の爆撃の様子やそれに揺れ動かされる感情が鮮明に記してある。

    何が衝撃的だったか、その圧倒的難易度と、それに見合うようなかっこよさだ。

    初めて聴く人は、クラリネットソロから始まる最初のゆったりとしたところに突然ぶっ込んでくるトランペットの連打に驚くだろう。

    そこから題材通りの爆撃大会が始まる。木管は連符に猛威をふるい、金管はとかく吠えられるところで吠える。(コンクール用のカットはそれが顕著に現れている)

    ダイナミクスは極端にやらなきゃこの曲の味は出ない。ただ「難しい」だけで終わる。16分強あるこの曲は、まさに緩急が重要であり、それに付随して連符、連打系の難易度がついてくる。

     そんな意識で作らないと、音楽ではない、それこそ作るまでが作業になりそうな曲だ。

    こんな曲を、名取交響吹奏楽団、精華女子高校吹奏楽部、さらに北斗上磯中学校吹奏楽部まで全国大会でやっているのだから驚きだ。

    それでも僕はかっこいいと思うし、いつかやりたいと思っている。

    ホルンの吠える場面はどの曲でもかっこいいが、この曲もかなり使い方が上手い。数々ある連符や連打も効果を見据えて置いている感がある。(申し訳ないが、華麗なる舞曲はただ連符並べられるだけ並べてみた感が否めないので...)

    要所要所にメロディアスな旋律、美しい和音も挟まっており、音楽としての揺れ動きが激しい一曲かな、と個人的には思っている。

    僕が初めて聴いた時は、ジョン・マッキーの交響曲「ワインダークシー」を初めて聴いた時と同じような衝撃が走った。なんなんだろうな、難しいから魅力を感じているのではないと思いたいけど、かっこいいと思う曲がだいたい難しいのは否めない。

    ただ、少なくとも情熱的な演奏は、人の心を動かすほどダイナミクスがあり、ハーモニーも深いはずだ。そういうものに魅力を感じ、感動するのは自明かもしれない。

    そんな正当化をして、文章を締めよう。

P.S

    ここまで一曲聴くのに体力を使う曲があるだろうかね、シンフォニーの重さと音楽の荒ぶりがそうさせるのか。